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私はクラゲになりたい。

迷走系ブロガーの方向性ぶれぶれブログ

「MARUMO HOUSE」、書いてみた。

まるも 田舎フリーランス養成講座 ショートショート

 

11月の風が、東京湾を撫でたその勢いで、わたしのスカートをすくった。

金谷はもう、冬だった。

 

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キャリーバッグを右手に、スマートフォンを左手に、わたしは見知らぬ町を歩く。昨日、荷造りしたバッグは、なにをいれたか自分で疑うほどの重量で、わたしの足の進みを遅らせる。そうでなくとも、場所が分からずに、迷う両足は遅いというのに。

「田舎、だなあ…」

そんなことは百も承知でやってきたけれど、わたしの慣れ親しんだ福岡・天神とのあまりの景色の違いにちょっとうろたえている。まず、目印になる建物がひとつもないのだ。車1台がやっと通れるほどの道の両側には、民家、民家、民家…。

金谷港のフェリー乗り場から、向かいにあるガソリンスタンドまで行き、そこから左に折れてしまったのが間違いだった。左折してすぐのファミリーレストランを最後に、すっかり同系色の民家たちに翻弄されて道を見失ってしまった。集合時間には間に合わないかもしれない。仕方がないが、一旦ファミレスまで戻って、大通りを沿って進み直そう。

そう思って振り返ろうとしたとき、体に重いキャリーバッグが付いてきてくれず、バランスを崩したそれは、そばで蓋が外れていた側溝にはまってしまった。

「あーーーー!」

面倒なことになった。引き摺るだけで精一杯だった重み。引っ張り上げる気力が湧かずに、しばらくそれを眺めた。

「すいません」

突然かけられた声に、ぼんやりと振り返る。あまりに無心になっていたので、そばに人が立っていることすら気付かなかった。

「はい…?」

「あの、コワーキングスペースまるもってとこを探しているんですけど」

「分かりません」

「駅は?地図だとその先にあるはずで…」

「わたし、地元の人間ではないので」

 「…ちっ」

「は?」

聞き間違いなどではない。舌打ち。眉間のしわ。整った顔のその男は、顔に不快感と書かれているかのごとく口を曲げた。イケメンは怒ると迫力があるなあ、と思った。

「ありがとうございました」

心にもないような、儀礼的な言葉を口にして、そいつはわたしがさっきたどってきた道を戻ろうとする。

「あ、待ってください!すいません、荷物、はまっちゃって。引っ張ってもらえませんか?そしたら、一緒に――」

「急いでるんで」

「え?」

「じゃ」

すたすたすた、と。そいつの大きな背中はあっという間に見えなくなった。男の腕なら簡単だろうと、安易に頼ってしまったことに情けなさと恥ずかしさを感じながら、既にここまでで疲労を感じている腕をキャリーバッグの持ち手にかけて、一気に力を込めた。

 

一旦、道を戻って、大通り沿いを歩いてやっと目的地の最寄り駅である浜金谷駅に辿り着いた。ここからまた民家ばかりが建ち並ぶ道を進まなければならない。

「あの」

人に聞いた方がよさそうだと判断して、駅前に立っていた白いセーターの男に声をかけた。地元の人であることを願いながら。

「すいません、まるもっていう…」

「あ!大倉さん?」

見知らぬ相手の口から自分の名前が飛び出たことに驚いた。しかし、すぐに思いつく。

「もしかして、スタッフの方ですか?」

「はい。いらっしゃらないから、道に迷われているのかと思って…」

「すいません。その通りで」

駅舎にかけられた時計をちらりと見た。針は13時10分を指している。完全に遅刻だ。

「問題ないですよ。分かりづらくてごめんなさい。行きましょうか」

先導するように、私より早く足を動かしたその人は、ごく自然にわたしのキャリーバッグの持ち手を自分に引き寄せた。

「いいです!重たいので…」

「ほんとだ。重たっ」

申し訳なさで、取り返そうとする私の動きを、その人は柔らかな笑顔で遮った。

「こんな重い荷物で、ここまでご苦労様です」

さっきの男の顔が浮かぶ。眉間のしわ。舌打ち。曲がった口。同じ人間とは、思えない。

 

「みなさん、もう着かれているんですか?」

「はい。もうひとりちょっと遅れて来ましたけど、大倉さんで最後です」

「あ、その人ってもしかして、背が高くて、眉がこう、きりっとしてて、黒いパーカーとボストンバッグで…」

「そうですけど、ともだち?」

「違います」

ちいさなスーパーを通り過ぎ、ちいさな橋を渡ったら、そこにまるもはあった。かわいい木彫りの熊が「まるも」と書かれた看板を持って歓迎してくれていた。

「ただいまー」

「こんにちは」

硝子戸を開けると、あたたかな空気が私のひんやりした体をまるごと包み込んだ。温度差に、耳の先がじんじんする。10人ちょっとの「こんにちは」や「おかえり」の声に迎えられて、一番手前の席に腰を下ろす。先に座っていた面々の顔をざっと眺めた。これから、この人たちと1ヶ月間過ごすんだ。

「それじゃ」

一番奥の席に、やっぱり奴がいた。

「全員揃ったので、軽く最初の挨拶を。今日から、ここで、田舎フリーランス養成講座がスタートします」

今回の企画者である池水さんがみんなの前に立って話しだしたので、視線をそちらに向けた。池水さんは、みんなへの挨拶と、この講座の目的を話した後、今日の流れを簡単に説明した。

「荷物が多いので、先にみんなが寝泊まりするゲストハウスを案内しようと思います。事前のアンケートから、4つのゲストハウスにそれぞれ割り振っているので…じゃあ、まず、古民家ハウスは…」

わたしが希望したところだ。さっと手を挙げる。遅れて、視界の端で、大きな掌がのそっと挙がった。

「今回は、どこも人数少なめなんだよね。古民家ハウスはふたりです」

「え?」

ばっと、顔を右に向けた。眉間のしわ。曲がった口。舌打ちはしていない、けれど十分に迫力のある整った顔。かっちりと目があった。ふたり?ふたりって……こいつと?

 

田舎フリーランス養成講座のレポートを私の個性爆発で書いたらこうなった

※講座がスタートして1週間ですが、なにかが芽生えそうな三角関係があるという事実は一切ございません。

 

これを書きながら、たまたまイケダハヤト (@IHayato) | Twitterさんのこの記事を読んだ。

www.ikedahayato.com

わたし、高地に行ってもイケハヤさんに絶対近寄ってもらえない……。

 

そもそも、やはりこれだと、「ブログ」のテンプレートで語ることができない。先人の知恵を拝借できない。「ブログ」のなかで戦うなら、そのルールにのっとった武器を持たねば…!

 

ブロガーへの道は遠く険しい……。

 

次回、「気が済んだので、ちゃんとしたブログを書く」。お楽しみに。

 

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